第4章 一枚上手
翌日の朝、家で飯食って朝練に行く準備をする中、母親がテレビを観ながらふいに俺に声をかけた。
「秋紀、この子ってアンタと同じ高校生なんだってね」
「あ?…」
急いでるのに話しかけてきた母親にイラつきながら答えるも、テレビ画面に映るの姿を観て固まった。
いつも見ていた制服姿とは違う、華やかなドレスに身を包んで、髪を綺麗に纏め上げたを見て、思わず息を呑んだ。
は、俺とは違う世界の人間なのかもしれない。
「可愛くて才能もあるなんて、世界中が羨むわね」
録画したものなのか、ピアノを演奏しているが映っているテレビを観たまま話す母親の言葉が、深く胸に突き刺さる。
俺はもしかして、とんでもない奴を相手にしてたんじゃないか?
俺とは釣り合わない、好きになっちゃいけない奴なんじゃないか…?
そんな事を考えながらも、画面越しのをボーッと見続けた。
すると、画面が急に切り替わった。
〈我々は只今空港に来ています。まもなく、さんが到着するようです。このまま中継でインタビューしてみようと思います。〉
〈あっ!来ました!さん、少し宜しいですか?〉
《はい?》
画面に映ったは、演奏中とは違う、清楚な白のワンピースを着ていた。
なんだか、画面の中のがすごく遠くに感じる。
キャスターの人がに質問している内容も耳に入ってこない。
「俺朝練あるから行くわ」
母親の後ろ姿に声を掛けた時、たまたま聴こえた。