第3章 空白の時間
〜赤葦side〜
俺は、あの時のとの会話を木葉さんに伝えた。
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「って、天才ピアニスト少女のだよね」
『え、私のこと知ってたの?』
「いや、偶然知ったんだけどね」
は驚いた様子だったが、何か思う事があったのか、俺に話し始めた。
『赤葦くん、あのね、私海外のコンクールに出場することになったの』
「えっ、それ凄い事なんだよね?」
うん、と返事をするも、どこか寂しそうなを不思議に思う。
そして、大事な事を聞いてみた。
「木葉さんには、その事言ったの?」
は小さく首を横に振って否定する。
『言ってない。だって、木葉先輩には嫌われたくないの』
俺は思わず、今にも泣き出しそうなの頭を、そっと撫でた。
「木葉さんはそんな人じゃないよ」
『知ってる。けど…』
「何かあったの?」
『昔、言われたの。思ってたと違う、ピアノっておしとやかな子がやるものだろ、って。それからは、天才って言われて調子乗ってる、とか』
やっとわかった。
は、木葉さんに全てを話したら、その人たちみたいに自分から離れて行くと思ったんだ。
「木葉さんはそんな事言わないよ」
『うん…』
木葉さんなら、すげえ才能だな!とかって褒めそうだし。
それでも不安そうなが少し心配になる。
「大丈夫だよ。俺が保証する」
期待を込めるように真っ直ぐ俺の目を見るに頷いて、ポンポンとの頭を撫でる。
『私、今度のコンクールで入賞したら、もう1回告白する』
そう言ったは、覚悟を決めた真っ直ぐな瞳をしていた。
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俺が話し終わると、木葉さんは大きなため息を吐きながらその場にしゃがみ込んだ。
「俺、赤葦とがイイ感じなのかと思ってたわ…」
「あれだけ木葉さんに好意寄せてたじゃないですか」
「そうだけどさぁ…」
が木葉さんを好きなのは明白なのに。
でも…
「いらないなら俺にください」
〜side終〜