第2章 キスだけじゃ、止められない
千代さんが部屋から出て行った後、僕達二人は暫く抱き合ったままだった。
でも、流石にこの体勢は……
僕の心臓が持たない、な……
僕は抱き締めていた手を、そっと緩めた。
すると、キースさんは
「すまなかったね……」
と、小さく呟くと僕から距離をとるように離れようとしたので、思わず
ギュッ
と、キースさんの手を握ってしまった。
だって、まだ……本当は……
離れたくなかったから……
「イワン君……」
「は、はい!」
「実はね、さっきの千代さんは……」
言葉の続きをじっと待っていても
何故か、なかなか続けてくれない。
でも、僕は彼の……キースさんの言葉を、
じっ、と待ち続けたんだ。
すると、キースさんも意を決したように言ってくれた……
「千代さんはね、わかるそうだ……その……誰が誰を好きなのかを……」
「へぇ~……」
な、なんだ、もっと凄いことを言われるのかと思った。
キースさんが、あれ?って顔をしているな……
「その……だから、その……」
また珍しく歯切れの悪いキースさんに、僕はまた続きの言葉をじっと待つ。
「千代さんは、僕の気持ちを気付いていてね……その……」
キースさんの……気持ち……?
「私が、その……イワン君のことを……その……イワン君のことを……」
キースさんが僕の手を、ギュッと握った。