第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「つ、強いんですね……」
「へ?あ、うん。ザルって良く言われる」
「ザル……ですか……」
「BBJ……大丈夫?」
「はい……」
ま、まさか僕が潰されるとは……
本当に……さんには、色々とびっくりさせられるな……
想像の斜め上を行くこの人を
僕は……
「お会計……済ませたからね……」
「…………ええええっ!!!」
うっ……いま、一気に酔いが……
「今度、半分貰っていい?流石に、ここは私のおごり!なんて軽く言えない金額で……ごめんねー頼りないおばちゃんでーーー!!!」
なんて、顔の前で手を合わせて謝ってくる……
ウ、ウソだ……
この僕が……
シュテルンビルトの王子様なんて言われKOHであるこの僕が……
こんな年増の女性相手に酔いつぶれた上に、代金を立て替えさせたなんて……
虎徹さんに帰りも送って行くように頼まれたのに……
「タクシー呼んだから、ちゃんと言える?」
「は、はい……いや……あの……出来れば……」
「もう私の周りの男達は、みんな可愛いなぁ~いいよいいよー!一緒に行ってあげる」
そう言って豪快に笑ったさんは、僕と一緒にタクシーに乗り込んだ。
僕はドライバーに行き先を伝えると、少しウトウトとした。
「もたれてて、いいよ」
そう言ってさんは、僕の頭をそっと自分の肩に倒してくれる。
僕の頭に添えられた手は、温かくて大きな手だった。
なんだか懐かしい……大きさで……
僕の膝をポンポンと叩いて、自分の膝に手を置いた。
その温もりが……
なんだか、なんだか……