第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「失礼しまーーーす!鏑木さーんっ!またこれ、記入漏れですよーーー」
ヒーロー事業部のオフィスに顔を出したのは、最近入った経理部のパートのおばちゃん。
「あっ!おばちゃんっ!わざわざこんなところにまで来てもらっちゃって、すんませんっ!」
「ううん!来てみたかったんですよー」
おばちゃんはニヤリと笑うと、中をチラッと覗く。
「あ、もしかして、バニーのファンっすか?」
「まだ、生で見てないから~」
なんてニヤニヤしながら、覗いている。
「おい!バニー!俺達がお世話になってる、経理のおばちゃん!お前のファンなんだって!」
「そうですか……でも、お世話になってるのは、貴方だけですよ虎徹さん」
少し不機嫌な顔で席を立つバニー。
だけど経理のおばちゃんの前に来たら、もちろん笑顔だ。
だってバニーは、ファンを大事にすっからさ!
「僕の相棒がいつもご迷惑をおかけしています。バーナビーで……」
すでに目がハートになっちゃってるおばちゃんに、俺はそうだろ?そうだろ?俺の相棒は格好いいんだよな!なんて気持ちで眺めていたら……
「す、すいませんっ!!!」
突然、バニーのヤツが大きな声で謝ると、頭をブンっっと下げた!
「え?バニー……」
「虎徹さんっ!!!貴方もこちらに来て下さいっ!!!」
慌てて近寄ると、頭を上から押さえ付けられ、下に下にと下げられちまう。
「おいっ!何すんだっ……」
「何すんだ!じゃありませんよっ!!!すいませんっ!!!おばちゃんだなんって!!!」
「えっ!?」
おばちゃんが、びっくり顔で固まっている。
「貴方、何てこと言うですか!この方、貴女よりもお若いですよ!貴方は女性に対して、失礼過ぎるんですっ!!!」
「やだ!気にしないでっ、大丈夫だからっ!!!」
ヒーロー二人が平身低頭になっているからか、
あわあわしている、経理のおばちゃん……
って、俺より年下…………って、
「ほんと?」
思わず本音が漏れると、バニーが俺の頭を押さえる手が一段と力強くなった……