第14章 君となら視線だけで
「良かったの?パパにあんなこと言って」
「あぁ。悪かったな。お前に気ぃ使わせちまって」
「そんなこと……」
そう言って手を握ってくれる。
でも、今は優しくよりも、力強い感じ。
「今度から会うときは、ちゃんと迎えに行く。んで、帰りはちゃんと家まで送る」
「ええっ!?いいよ、そんなことまでっ!」
「いや、お前とちゃんと付き合いたいんだ。最初からそうするべきだったんだ」
「虎徹さん……」
「でも、ま、先に犯人捕まえなきゃな」
私の手を引き寄せて、キスしてくれる。
「そうだね」
私がくすぐったそうに笑っていると
「あぁ。今夜もワイルドに吼えますか」
「さっきは、全然ワイルドじゃなかったけど?」
少しイジワルを言ってみた。
「だっ!お前なーオヤジさんの身にもなってやれよ!自分と年がそう変わんないのが、娘の彼氏だなんてよー」
「ほんっと、そう!でも…………」
「ん?」
「虎徹さんが好き」
「ははっ」
顔を真っ赤にして笑ってる。やっぱり、その顔はワイルドじゃないけど……
すぐに彼はヒーローの目になる。
その目が好き。
自分のポーターが見えた。
「いってきます!ありがとう、虎徹さん!」
「おぉ!また現場でな!」
その瞬間、虎徹さんが私の手を強く握って
「いい目だ。ヒーローの目だな」
だって。やっぱり私達は同じことを考えている。
私はニコッと笑って言った。
「虎徹さんも、ね。でもポイントは私が頂くからね」
「ははっ!気を付けてな」
「そっちこそ」
今はまだ、この視線だけで充分愛し合える。
今は、まだ…………ね。
end