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それでも…世界を愛そう『文豪ストレイドッグス』

第3章 帽子の似合う君。


和菓子のほんのりとした甘さを感じ、苦味の少ない抹茶を口付ける菊乃と紅葉はとても上品だ。いかにも高そうな和菓子に中也は戸惑う。菊乃は可笑しそう微笑むと、黒文字と呼ばれるクスノキで作られた串で和菓子を切り中也に向けた。

「中也、口を開けて」
「は、はい!?」
「おや、中也…羨ましいの。菊乃姐さんから直々にあーんのご所望じゃ」
「なっ…お、俺をからかわないで下さい!」
「ふふ、遠慮はいらないさ…好きなようにお食べ」

照れて恥ずかしそうに小さく怒った中也に、きょとんと目を丸くした紅葉と肩を竦めて笑った菊乃は意地悪過ぎたかと内心反省しつつ切ってあった和菓子を自分の口に放り込んだ。

「中也、上に行きたいなら上司に媚びよ…上手く甘える事が大事じゃ」
「そうだね…幸いな事に君の後ろには紅葉と云う強みがある。そして今この瞬間、私とも知り合いになれた」

音をたてて抹茶の風味を楽しむ菊乃は視線をそらす事さえ許されないといった目で中也を見定める。にっこりと笑い、抹茶の入った陶器の椀をコトリと置いた。

「中也、君は上に行ける逸材だ。だから将来君に部下が出来た時今の私や紅葉のように部下へ労り奢って差し上げなさいな…部下を気遣い甘やかすのは上司の仕事だよ」
「私もいつ、いかなる時も菊乃姐さんに甘やかされて育ったからな…存分に部下を甘やかすつもりじゃ」
「流石紅葉だ…部下の労り方をちゃんと心得ているようで君の部下達が羨ましい限りだよ」
「まぁ!いついかなる時も菊乃姐さんが一番に決まっておる、菊乃姐さんに甘えられるなら私は何だってするつもりでありんすよ?」

菊乃に依存、執着する紅葉に苦笑いの中也は恐る恐る高級であろう和菓子を口付けた。あっ…うま、と無意識に呟いた言葉に紅葉と菊乃は中也を見つめて小さく吹き出すように笑い合った。

ーー…少しして、菊乃と紅葉の美しさに当てられた莫迦な男(モブ)達が身の程知らずに安いナンパを仕掛けてしまい、中也以上に紅葉が怒り奮闘で仕込み杖から刀を取り出し『金色夜叉』が出そうになり、まぁまぁと苦笑いを浮かべて丁重に断る菊乃の姿を街の通りで見た太宰治がいたそうな。そして執務室に帰って来た菊乃に言い寄る治に浮気がバレた男のように弁解した
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