第2章 全員揃わないのですが。
「懐かしいですわね、その反応」
また笑われてしまった!うわー!恥ずかしいぃー!
真っ赤な顔をお見せするのはいただけなくて、手で隠す。
いままでもこんなような扱いはされてるけど、流石に赤の他人の前でこれは恥ずかしかった。
「さあさ、こちらにいらしてくださいな」
カラカラと音を立てて開く扉は、僕の部屋のと大差ないけど、〈封呪〉の威光のおかげで全く別物に見えた。
「お、お邪魔します...」
恐る恐る玄関に足を踏み入れ、辺りを見回した。
内装は僕の部屋とそんなに変わらない。しいて言うなら、抹茶色の家具が多いようにも見える。
「今、お茶をお出しするから、あちらで待ってらしてくださる?」
「は、はいっ」
部屋の中をジロジロと見ていたことがバレたのかと思った。
実際そうではなかったようで、すぐに台所に向かっていた。咎められるかなと焦ったけど、余計な心配だったみたいだ。
あちら、の方を見ると新聞を大きく広げる誰かが、二人がけのソファを足を組んで座っていた。
後ろ姿なのでよく分からなかったけど、服装や体格的に男性らしく、お茶を啜りながら読んでいた。
「ん?誰だ?」
男性が物音に気づき、くると振り返った。片目が隠れた、天然パーマの黒スーツイケメンがいた。なんか嫌な予感がする。
もしかして、九十九さんのおじいちゃんだなんて言わないよね?どう見たってどこぞのアイドルだよ!
とりあえず挨拶しなきゃ。
「は、はじめまして!僕、安倍「嗚呼、楽の担任だな。聞いている。ここに座るといい」んえ?」
ここで失敗するわけには!と意気込んで、大きな声で自己紹介をしようとしたら名乗る前に遮られた。出鼻くじかれた感ハンパないんだけど。
優雅に新聞を畳んで、こちらを見ながら一人用ソファを撫でた。どうやら隣りにあるそれに座っていいらしい。というか。え、待って僕のこと知ってるの。誰に聞いたの。
ダラダラと冷や汗の滝は、額や背中を伝った。
「噂はかねがね。人間でありながら妖怪学校の教師とは」
面白くて仕方ない、と薄く笑う様はよく似合っていた。イケメンオーラやばい。
「実は僕も驚いてます...」
そもそも着任して、教室に入るまで妖怪学校だなんて知らなかったし。学園長は教えてくれなかったし。むしろ面白がってたし。落ち込む僕に、そう悄げるなと笑う男性。イケメンオーラやばい。