第3章 担任の授業見学に巻き込まれたのですが。
入道 side
始業のチャイムが鳴り、全員が席につくと神酒が、何故か晴明(せいめい)を連れて教室に入ってきた。
おい待てなんでだよ。
始業の挨拶の後、にこにこ笑う神酒は俺たちにとって衝撃的なことを言った。
「ってことで、今日はみんなの担任の安倍先生が見学しはるんで」
「ふ...ふつつか者ですがよろしくお願いします」
何が、ってことでなんだよ。知らねーよ。
そして嫁にでも来るつもりなのか晴明(せいめい)。よろしくしたくねぇな。
両極端な二人の様子に、クラス全員が一気にどんよりする。
佐野は目が死んでるというか、もう嫌で嫌でしょうがないって顔だし。玉緒(たま)に至っては可哀想なほど青ざめていた。
「神酒と晴明(せいめい)...、嫌な組み合わせだな」
「おいおい壱年の頃の二の舞いはゴメンだぜ」
それな。
全くもって嫌な予感しかしない。
玉緒(たま)の言う通り、二の舞いだけは勘弁して欲しい。
あんなことがもう一回なんてあってたまるか。
まあ、あの時と違うのは楽がいることだ。もし万が一、起こってしまったら止めてくれるんじゃないか、なんて。
だからといって、断じてアレが起こってほしい訳じゃないが。
そんな俺らの様子を目の前で見た晴明(せいめい)は、一緒になって青ざめていた。
「なんかみんな険しい顔してるけど、妖怪学ってそんなに難しいの?」
ちげーよ、そこじゃねぇよ鈍いな。
妖怪学が難しいうんぬんじゃなくて、嫌な予感しかしねぇからこんな顔してんだよ。
「人間に馴染みがないだけで、そない難しいことあれへんよ」
困ったように笑う神酒は、晴明(せいめい)にざっくりとした説明をする。
「妖怪学は、まあ、妖怪の歴史やったり生い立ちやったり、これまでの妖怪について学ぶ。妖怪版の社会科な思わはったらよろしいわ」
「へぇ~」
その説明に納得したのか、ほうほうと相槌をうつ。
ホントに妖怪のこと何も知らねぇんだな。
晴明(せいめい)が恐らく理解できたところで、こっちに向き直る神酒。
「ってことで、まずは先週出した宿題提出して~。あ、安倍先生は後ろの席に」
「「えっ」」
神酒の言葉に、やべっと言いたげに顔を歪める泥田と狢。
やってないのかよ。
冷や汗ダラダラな狢は、神酒にバレないようにこっそり耳打ちしてくる。
「おい入道、宿題なんてあったか?」