第2章 全員揃わないのですが。
のちに、その攻防はカバディみたいだったと狸塚君は語った。
「「「風紀を乱してんのはお前の方だ!!!」」」
「僕の方だったッ」
僕の背中に見事に決まる、背後からの飛び蹴りは威力があった。痛い!
ちょっと三人とも、息ぴったりすぎない?!
蹴り飛ばされた僕は、勢いあまって座敷さんの真横を通過して、廊下に出た。
危うく廊下の手すりにぶつかりそうになったとき、僕の体が変な格好でピタッと止まった。
え?止まった?
「大丈夫?」
聞き覚えのある声に首だけ振り返ると、九十九さんがいた。
長かった灰色の髪は、三本の簪を使って後ろでまとめられている。
前髪はオールバックからセンター分けになって、所々でくくられて。なんかこう、付喪神!って感じになっていた。
「九十九さん!」
昨日ぶり!と笑うと、やっぱり無表情でうなずく。
でもちょっと嬉しそうな気がする。
「おはよう、先生」
「おはよう!九十九さん!」
どうやら妖術で助けてくれたみたいで、倒れる寸前みたいな体勢からちゃんと起こしてくれた。
よくよく見ると、僕の腕から離れていく極細の糸がなんとなく見える。
この糸(?)で僕の体を支えてくれたのかな?
お礼を言おうと前を向いたら、ぱっと目につく長い長いスカート。え?!
ロングスカート!?もしや!!
「そ、それは、スケ番セーラー...!!」
もしかして、もしかしちゃうの!?
はわわと驚く僕を見て、泥田君がボソッと呟いた。
「今度はスカート切れとでも言う気か...?」
いかにも、ドン引きしてますと言いたげな顔だった。
酷いな!
その横で佐野君、狸塚君、座敷さんが白い目で僕を見ていた。
なんでさ!セーラー服、最高じゃん!
僕の質問(?)にちゃんとうなずいて返事してくれる九十九さん。あっ、優しい世界。
スケ番セーラー。一時期流行ったセーラー服だ。
ヤンキーとかレディースと呼ばれる不良がいた頃の。
「凄い!今どきレアだよ!!」
なんでそんな年代モノを着てるの!?
今どきそのタイプのセーラー服は、お目にかかることはない。
一体何処から...。
冷めやらぬ興奮を隠しもせず目を輝かせると、さらにドン引きな四人。
「「「「えー」」」」
な、なにさ。滅多にお目にかかれない超レアなんだぞ!
分かってないなぁ。
今日は最高の一日になりそう。