第2章 全員揃わないのですが。
「座敷さん!!スカートの下にズボンをはくのは校則違反だよ!」
校則違反だし、何より僕のセーラー服に対する愛が許さないよ!うがー!と吠えるように注意する僕を、呆れていますと言いたげな目で見て反論してくる。
「うるさいなぁ、冷え症なんだよ」
めんどくさそうに言う彼女は、暖かくていいだろ、と呟いた。
よ、良くないよ!
「まさか本当に座敷を登校させるなんて...。なかなかやるじゃん、晴明(せいめい)の奴」
ちょっと離れたところで、泥田君が笑いながら感心していた。だけど、余裕のない僕はそのことに気づいていなかった。
「ダメだよ風紀が乱れるよ!!」
暖かいとか、そういう問題じゃないんだよ!駄目なものは駄目なの!でも、風紀なんていうのは建前。
セーラーはそれ単体だからいいのにッ!
「風紀って...。今更だろ」
座敷さんは教室をちらと見て、同意を求めるような視線を向けてくる。そ、それはそうだけど!そうだけども!
「泥たんの人間嫌いも治したしね」
その一方で、泥田君の肩にくっついた狸塚君は、にこにこと嬉しそう。ちらっと聞こえた会話は...褒めてるのかなぁ。
「えっ...まあそうなるのかなぁ...」
狸塚君の一言を、なんだか認めたくない泥田君。おっと、どういうことかな?!
って、そうじゃなくて!座敷さん!
「とにかく脱いでよ!!!セーラーに対する冒涜だ!!」
こうなったら実力行使だ!
セーラーの良さが分からないなんて、ズボンをはくなんて!
いつも(?)の冷静さはどこへやら。ある意味暴走していた僕は、セクハラ紛いな行動をしようとしていた。
「バッ、なんだその手は!脱がす気かコラァ!!」
当然恥ずかしそうに怒る座敷さん。脱がせようとする僕に対抗して、逃げようとする。
よく分からない攻防を続けていると、なんだか楽しくなってきちゃったぞ。
ズボンを脱いでほしい気持ちは変わらないんだけど、どっちかって言うと遊んでる気分...。
「まあ、一生懸命だし。悪い奴じゃないし...」
視界の端で泥田君と佐野君と狸塚君がぐるぐると腕を回し、ストレッチをしながら席をを立つ。
「なんだかんだでガッツはあるよな...。ただ...」
にこにこ笑いながらストレッチってなんか怖い。
でも、座敷さんにズボンを脱いでもらおうと必死だった僕は、背後へと近づく三人に気づかなかった。