第2章 全員揃わないのですが。
二人の目は本気だった。でも!そうだからこそ!
突き刺さる容赦のない鋭い視線に、息が詰まる。
「ほ、本当に彼女のためを思うのなら、学校に行かせるべきです!」
思ったよりも大きな声が出ていたようで、翡翠さんは驚いていた。だけどそれも一瞬で、僕を見る厳しい視線が和らぐことはなかった。
「能力を制御できず、ヒトを傷つけたんだ。自分も危害を加えられるかもしれない。そう考えるヤツがいないなど言い切れるか?」
残酷なことを言ってるようで、現実だった。
不安なんだ、きっと。
彼女が独りぼっちになってしまったら、学校に行かせたことを後悔してしまうと思っているんだ。でも。そうだとしても。
「大切なお孫さんなのは分かりました。でも!そうならもっと彼女を信じてあげてください!それに九十九さんのご友人も!」
心配なあまり、疑心暗鬼になっているんだ。
大切な孫のことが信じてあげられなくなってしまうくらいに。
でも言い方が不味かったのか、睨まれてしまった。
「なんだと、俺たちが楽を信じていないとでも言うのか」
お、怒らせちゃったよ!そんなつもりじゃなかったのに~!
でも、信じてないんだと感じたことに嘘はないから。
「う、そうです」
ひしひしと感じる殺気に、怖くとも肯定する。嘘じゃないって証明しないと...。
「そうか」
すると彼は、それまで鋭かった視線を和らげた。
それでもまだ怖いよ!
翡翠さんから目を逸らしたけど、身体の震えが止まらない。
「安倍先生は、あの子のことを考えるのなら学校へ行かせるべきだと言ったわね」
唐突に、ここまで何も言わなかった空澄羅(あすら)さんが口を開いた。そう。そうですよ!
学校に行かないと授業が遅れるし、成績が落ちる。
何より、友達に会って話すことができない。
今はスマホでLINEなんて方法があるけど、それじゃあ意味がないんだ。
「はい!」
ここは迷うことなく、言い切った。
だって華の青春と言われる高校生を楽しめないなんて、損だ。明らかに損だ!
それに!九十九さんの!セーラー服姿!見てない!見たい!
僕の脳内がてんやわんやしていると、空澄羅(あすら)さんは泣きそうな顔で笑いながら、あのねと言った。
「本当は、私たちだって分かってはいるのよ」
そう言った彼女の目から、一筋の涙が伝った。
「じゃあ!」