第4章 思い出の花。
自動販売機のジュース。カーブミラーに映る自分。
よその家のポスト。植木鉢に咲く可愛い花…。
ほとんどが目印にならない物ばかり。
仕方ない…3歳児の興味なんてこんな物なんだろう。
それでも何とか分かり得る情報を書き出して歩いた。
結構歩いた所で、二人は足を止めていた。
そよ風に乗って、とてもいい香りがした。
上品な香り……ハッとした。
(この香。)
その時、小林さんのおばあさんの声が聞こえてきた。
「昔にね、このお花をね…おじいちゃんがプレゼント
してくれたんよ。綺麗で可愛いお花…見てたら
貴方を思い出したって…。」
3歳の少女には深い意味は分からず…でも、
「おばあちゃん、良かったね。」
可愛らしい笑顔で返事を返す少女の姿に、
(優しい心を持ってる)って浩二君が
褒めていた事を思い出した…。
「その事があってね、おじいちゃんと結婚
しようと思ったんだよ。ふふ…恥ずかしいから
ママには内緒ね。」
そう言った彼女は顔を赤くして、幼い孫の
頭をなでた。
…素敵な思い出を持っている彼女達を
私は、すごく羨ましいと思っていた。
花は、上品な香りのピンクか紫色か白か…。
肝心の花もハッキリしていなかったが、
唯一ハッキリと薫る香りにホッと胸をなで下ろした。
最初に話を聞いた時には、
花束に出来るような花を思い浮かべていたけど…
この花は、低木に咲く花。
花言葉は「永遠」
私も大好きな花だから、間違いない…よ。