第6章 夢の後の後。
いつもより疲労加減が半端なかった…。
もう今日は帰ろうと、帰り支度を始めた私に…
浩二君が話掛けてきた。
「え~と…何てゆったっけ?じ…?じん…?」
「沈丁花。」
「そう!それ!じんちょうげ。…そんなに…
ええ香りなん?」
さっきまでの賑やかさが嘘のように、
また、浩二君と二人きりの静かな部室に
しとしとと…雨の音が響いていた。
浩二君の声が背中に響く…
「うん。いい香りやで。私も、ほんま好きな花。
え~と。…花言葉は、確か…。」
帰り支度の手を止め、浩二君に振り向きながら…
「えいえ…ん…。」
目が合って…ドキッとした…。
きっと、ずっと、私の事見てたんだと思う。
「『永遠』なんや。えらいロマンチックやん。
俺もどんな花か気になってきたわ。
今度、一緒に探しに行こか。…沈丁花。」
そう言いながら…私に…近づいてきた。
…なんか…無理…この空気!!
「お疲れ!!お先!!」
慌ててかばんを掴んで、部室を出た私は…
勢いよくドアを閉めてすぐ、へたり込んでしまった。
中から、いつも以上に意地悪そうな
浩二君の笑い声が聞こえた。
顔が熱い…耳に心臓があるみたい…
男の子と付き合った事くらいあるけど…
恋愛初心者かと突っ込んでしまいたいくらい…
ドキドキさせられてしまった。
…いや…私が勝手にドキドキしてるだけ?
…ヤバイ…これって…。
帰り道も、浩二君の事が、
頭から離れなかった。