第60章 【R18】【十四松ルート】その後
十四松は、すでに横になっているナス子の隣に自分も同じように仰向けになると、腕を横に伸ばして目で腕枕を促す。ナス子も素直にそれに従う。
付き合うようになってから、二人で横になる時はいつも十四松の腕枕で寝るようにするのが日課になっていた。
「ねぇ、ナス子姉さん」
「ん?」
「ハジメテセッ×スした時の事ってさぁ……いっちばん忘れられないんだねぇ」
「っ?! なっ……なにっ、急に……っ!」
腕枕をしながらナス子の肩に手を回し、流れていく雲を見つめながら感慨深い様子でそう言う十四松に、顔を赤くするナス子。
「痛いの我慢して必死にボクにしがみついてくるナス子姉さん、可愛かったなぁって。あ、今だって可愛いと思ってるよっ! スッゲェ可愛いっ!」
「━━━━━━……っそういうこと……直球で言わないでっ……馬鹿十四松……!」
照れる様子もなく、ただただ幸せそうに真っ直ぐにそう言われ、悪態が口をついて出てしまうが、未だに慣れない心臓の高鳴りに赤くなってしまった顔も手伝って、すぐそばにある十四松の顔がまともに見れない。
二人が黙ると、春の心地良い風と、草の香りが鼻をくすぐって、眠気を誘う。
少し肌寒くも感じる空気と、十四松の体温が気持ちよく、瞼が重くなってくる。
「姉さん、眠い? 起こしてあげるから寝てもいいよー!」
「ん……そう……? じゃあ……ちょっと、だけ………」
子供を寝かしつけるかのように、ぽんぽんと優しく背中を叩かれると、ナス子の意識は夢へと引き込まれていき、あっという間に規則正しい寝息が聞こえてくると、十四松は視線を空へと戻し、目を細める。
「……しあわせ……だなぁ~……ボク」
己の言葉を噛み締めるように目を閉じると、自分の腕の中ですやすやと眠るナス子を抱き締め、いつの間にか十四松自身も深い眠りについてしまったのだった。