第59章 【R18】【トド松ルート】その後
「見て見てトド松! わはっ、変な魚~……ちょっとトド松が変な顔した時に似てるねっ、目がギョロっと大きくて」
「それを言うならこっちのぼ~っとして動かないやつもナス子姉に似てるよ」
平日の昼間とはいえ、それなりの規模を持つ水族館は人も少なくなく、観光客や団体客で賑わっていた。
「平日なのにお客さん多いね~」
「人気がある水族館みたいだからね。ツアーのお客さんとかもいるんじゃない?」
「なるほどねぇ~」
確かに通路にも、どこの水槽の前にも人は多いのだが、ナス子はふと気付いた。
全然歩きにくくない。
普通これだけ人がいたら、肩がぶつかったり前に進みにくかったりしそうなものだが、それがほとんどない。
チラリとトド松の顔を見上げると、ぐっと肩を寄せられ、その横を前から来たおじさんが通過していく。
「あ、ほらナス子姉、もうちょっと先に行くと見たがってたくらげの水槽があるみたいだよ。ライトアップされてるってやつ」
「………トド松……」
「ん? なに?」
パンフレットの案内を確認しながらも、自分が人とぶつからないように配慮してくれていることに気付き、照れ臭さと同時に胸が高鳴る。
「な、なんでもない……ごめん」
「はぁ? あ、あれじゃない? くらげっ」
「……っ…ホントだ! 行こ行こっ!」
「あっ、だからっ、急に走ったりしたら危ないってナス子姉!」
恐らく赤くなってしまっている顔を見られたくなくて、足を前に出してトド松の手を引っ張る。
なんなのだこの末っ子は、これではただのイケてる男子だ。
トド松が本当は優しい子なのは知っているが、付き合い始めてからというもの、可愛いだけだったトド松がどんどん格好良く見えてきてしまって、調子が狂う。
丁度ツアーの団体客が引いたところなのか、この水族館の人気ポイントである大きなくらげの水槽の前に置かれたベンチは人がまばらで、運よく座ることが出来た。