第59章 【R18】【トド松ルート】その後
待ち合わせ場所の駅の改札口に着くと、珍しいことに、すでにナス子がそこで待っていた。
そしてさらに珍しいことにトド松が気がつくと、胸がほわっと温かくなってさっそく幸せな気持ちになる。
ナス子は普段ほとんど穿くことがない膝丈のスカート姿で、そのスカートは前にトド松が選んであげたものだった。
スマホに視線を落としていたナス子がふいに顔を上げ、近くまで来ていたトド松と目が合うと、ぱっと笑顔になってこちらに駆け寄ってくる。
「トド松~! おはよっ、早かったね~…なんて、私もさっき着いたところなんだけど」
「おはようナス子姉。てか珍しくない? ぼくより先に待ち合わせ場所にいるなんてさ」
「あははは~、実は水族館なんて久しぶりだし、その……出不精の私とはいえ、遠くにデートとなるとやっぱり楽しみになっちゃってさ、早くに目が覚めちゃったんだよねぇ」
照れくさそうに笑って頭を掻く年上の恋人が、とても愛おしい。
柄じゃないなぁなんて思いながらも、温かい気持ちが次から次へと沸いて来るこの感覚は嫌いじゃなかった。
「ったく子供じゃないんだから……ま、まぁ、ぼくも同じようなものだけど……あと、今日のその服装……」
「ハイ! どこか変なところはありませんでしょうか!!」
ビシリと敬礼するナス子を上から下までもう一度ちらりと見て顔をそらすと、少し頬を染めたトド松がニヤけてしまう口元を押さえる様にしながら呟く。
「いや、ないよ………か、可愛いんじゃない」
「え? ごめんトド松、声小さくて聞こえない……」
「~~~すっごく可愛いって言ったんだよっ! 一回で聞いてよね、もうっ………ほら、それじゃ行くよっ」
照れ臭いのを隠すように、早口でそう言って右手を差し出してきたトド松に、一瞬キョトンとしたナス子だったが、トド松の言葉に嬉しそうに顔を緩めると、差し出された手を取って、二人は手を繋いで歩き出した。