第55章 【逆ハールート】その後
「まず、聞いて?」
「ナス子姉、とりあえずその状態で話し合うのは無理じゃないかな? 声よく聞き取れないし」
次はトド松の声が聞こえるも、まだ顔は上げられない。
正直、全員の顔を見るのが恥ずかしいのだ。
「・・・・・・・・・皆の気持ちはちゃんと伝わってるし、すっごく嬉しい。 それに私も皆の事・・・す、す」
「おそ松君だぁい好き!」
「・・・・・・・なんだろうイラっとくるよね」
こんなに真面目に全員に自分の思いを告げようとしているのに、途中でおそ松に邪魔され若干イラっとするが今ここでお決まりの喧嘩パターンが生じると執着がつかないので一言だけ突っ込む。
「なんだよっ! ほんとの事だろ?!」
「ちょっと黙っててよ、おそ松兄さん! 今ナス子姉が頑張って何か言おうとしてるでしょ? 顔上げないままで何言ってるか聞こえにくいけど・・・」
「・・・ありがとう、トド松・・・いや、顔上げたいんだけども、ちょっと照れ臭いと言いますか、皆の顔を正面から見れないと言うか」
トド松にまたも同じ事を言われるがやはり顔を上げる勇気が出ない。
だが、こんな珍しくクソ生意気な弟・・・いやもう男性として見てしまっている六つ子が一生懸命こんな自分に告白してくれてるのにさすがにこの態度は自分でもないだろうと思うと渋々と顔を上げて正座に体勢を戻した。
誰を見ていいのかわからず視線は床へと向けられる。
「私、も! 皆の事・・・好き・・・です!! 」
「「「「「「━━━━━━━━━━!!!」」」」」」
ナス子の気持ちは既に知っていた六つ子ではあったが、素面で言われるのと酒に酔って言われるのとではまた印象が違う。
あれはあれで可愛いと思っているのだが、自分達が求めていた相手にちゃんと直接目の前で言われると六つ子達も途端に顔を赤くしナス子と同じ床を見つめてしまった。