第53章 【微エロ・逆ハールート】欲張り
「・・・おそ松ぅ」
不意に両手を伸ばし目が合ったおそ松に声をかける。
「は、はははははい━━━━!」
「・・・・・・抱っこ」
「は?」
言われたおそ松は股間を押えたままだが顔を上げて何を言われたのかとポカンとした。
そしてまた表情が無になると、他の弟達もおそ松の顔を見て無になった。
「してくれないならカラ松でもいい・・・」
「え!?俺ぇ?!!フーン、ご指名とあれば喜んで俺が」
「いや!最初に呼ばれたの俺だからね?! お前は引っ込んでろよカラ松ぅ!!」
「なんだとっ、俺だって今ナス子に呼ばれたじゃないか! ナス子はお前ではなく俺でもいいと言っているんだ、お前こそそこに股間でも押えて惨めに蹲っていればいいじゃないか!」
「・・・・」
せっかく回った魔法のおかげで素直に甘えられたのに、一行にそれが適わないナス子はおそ松とカラ松の喧嘩を無視すると、チョロ松の前に向かった。
しかしまだチョロ松はモード展開中でそれだころではない事を理解するとキョロキョロと相手を見回す。
その隣で一松が少し手を震わせ視線を泳がせながら両手を広げているのが見えると、ナス子は一松に正面から抱き着いた。
「一松・・・ハグ・・・」
「うん、ハグだね」
一松に腰に手を回され頭にもう片方の手を回されるとヨシヨシとナス子の頭を撫でる。
しかし一松の身体は今も尚震えていて、ナス子は一松のその様子を不思議に思い、額にキスをする。
「怖くないよー・・・いちまぁつ、お姉ちゃんがついてるよぉ」
「もうお姉ちゃんって間柄じゃないけどね・・・」
「・・・そっかぁ、そうだよねぇ、じゃあ私達は一体なぁに?」
「・・・・さぁ、幼馴染ではあるけどなんて言うんだろう」
「ふふっ、わからないけど両想いだ!」
ナス子は嬉しそうに笑うと、またも一松に抱き付き胸元に顔を埋め自分の顔を擦りつける。
その仕草に堪らなくなった一松は、強く強くナス子を抱くとボソリとナス子にだけ聞こえるように呟いた。