第1章 平穏な日々に嵐はやってくる~おそ松~
ちょっと機嫌が悪くなったのかクッキーを頬張る速度が上がった。
とにかく詰め込んでる。
「はいはい、ごしゅーしょーさまでしたぁ」
言いながら、全部平らげられる前に、ひとつ二つ自分の分を確保する。
「あーどっかに顔がよくて性格がよくておっぱいが大きくて俺の言うことなんでも聞いてくれて
当然俺を養ってくれていつでもヤらせてくれる彼女落ちてねぇかなー」
向かいに座っていたおそ松が両腕を伸ばしコタツに入ったまま床に寝転がる。
「いやぁーそれを言うなら・・・どこか知らない通路に迷い込んだら知らない光に包まれて、目を開けたらファンタジー的な異世界で、隣には可愛くて性格よくて当然イケメンでチート的に強い勇者とかがいてさ、出会った私を拾ってくれないかなぁ」
目を虚ろにしながらおそ松と同じ行動をとって寝ころんだ。
「それ俺より理想高くね? てか異世界って時点で理想も何もないんだけど。まぁお前の言ってる事いつもよくわかんないんだけどさ」
「それを言うなら現実にそこまで求めるおそ松だって理想高いでしょ」
「いやいや、お前だね」
「いやいやいや、おそ松だね」
「いやいやいやいや、ナス子だろ」
「いやいやいやいやいや、おそ松でしょ」
「「……………………」」
お互いの理想を語っても空しくなるだけだが、もう何十回、何百回とこんな会話を普段から繰り返している。
「やめよう、空しくなってきた」
「うむ、私もだ」
むくりと同時に起き上がり、背中を丸めて二人同時にお茶を啜った。