第53章 【微エロ・逆ハールート】欲張り
何がおかしいのか、ナス子はチビ太の言葉を聞くと先ほどまでのポツンとした静かな空間から温かな場所へと戻れたかのようにお道化たように笑いだした。
チビ太は何を笑っているのかはわからなかったが、今日のナス子の様子、そしてこの店に来た事が何かの意図があるんだと接客で学んだ知識から予想がついていた。
「姉さんはよー、あんなヤツラが・・・ってオイラもそうだけど、幼馴染ってだけで苦労するよなぁ、オイラも毎回毎回ツケばっかりで困ったもんだぜ」
喋りながら、チビ太はトクトクとコップに飲み物を入れ、トンとナス子の席に置くと優しそうに微笑み、腕組みをしながら首を横に傾けた。
「悩んでんだろ? 人の悩みを聞くのも商売なんでね? 姉さんも一発ぶちかましていけよ、な?」
「・・・ありがとう、チビ太」
チビ太の優しさがまるでおでんの汁がおでんに染み込むかのように、自分の心にも染みてくる。
そんなチビ太の優しさに差し出された飲み物を、今日一日考えこみすぎて何も飲んでも食べてもいなかったナス子は一気に飲み干した。
が
しかし━━━━━━━━━━・・・
「グブゥォエー━━━━━━━━━━!!!」
既にほぼ飲み込んでしまったが、この味に覚えがあった。
匂いはおでんの匂いに負け全く感じなかった為か気づかずまたも飲んでしまった。
苦手な酒を。
「えー?!! 姉さん?! どうしたってんだよ?! ・・・ま、まさかまだ酒苦手だったのか・・・?!わ、悪いっ!今水を・・・・・・」
ナス子は思う、一松だけでなくこの世界の住人はなんなく人の苦手なものを飲ませるのが上手いヤツらだと。
だがチビ太には悪意はなく、優しさから出されたものだ。
怒るに怒れず、すぐ体に回ってしまった酒で頭がグルグルしたが、それも丁度いいとコップをガンとテーブルに叩きつけるように置き、若干絡み気味にチビ太に話し出す。
「ねぇ~チビ太~・・・アイツらいっらい・・・なんらの~?」
「うわぁ‥‥焼酎一杯だけなのに完全に酔ってやがるぅ」