第53章 【微エロ・逆ハールート】欲張り
一方、悩みの種の六つ子達はというと。
松野家の居間に6人集合しながらも、ダラダラと暇な時間を過ごしていた。
「ねぇ、そういえばさ・・・最近誰かナス子に会ったやついる?」
ナス子という名を出した途端、一瞬だが兄弟達全員が押し黙るも、チョロ松は意を決して心配する想い人の名前を出した。
今日も安定の就活冊子に目を通し、さもついでのように聞いたチョロ松だが、開いた冊子のページは一向に捲られる事はない。
気にしないそぶりを見せながらも、内心は暫く会っていないナス子の事が心配で堪らなかった。
これまでの付き合いの中で、ここまで顔を見ていないのは珍しい事で、会いたい気持ちと心配の気持ちが交互に行き来している。
「・・・・・・行っても開けてもらえないしね・・・チッ!絶対に部屋の中にいる癖に居留守なんか使ってるし・・・」
「そうそう、しかもめっずらしい事にちゃ~んと玄関のチェーンまでかけてるから、このスペアキーもなぁんの意味もなさないんだよねぇ」
続けて何度も通っている一松やおそ松も、若干苛立ちにも似た呆れ顔で溜息を吐いた。
せめて声だけでも聞ければ少しはマシなのかもしれないが、何度声をかけても返事すらない。
頼りはトド松のLIMEのみで、返ってくるのはスタンプ一個。
「は~・・・やっぱりあれ、じゃない? ぼく達の気持ちバレちゃったんじゃないの?」
返された適当なスタンプを見て、トド松は渋い表情をする。
バレた、というのは先日のナス子のイタズラの一件からつい吐き出してしまった本音や、自分達のエスカレートした態度のせいだろう。
「そーなのぉ?! うーん、でも何で姉さんはボクらを避けるのかなぁ?」
「ノンノン十四まぁつ、ナス子は避けてるんじゃぁない、俺の魅力が眩しすぎてルームから出てこれないでいるんだ・・・きっと、な・・・フフーン」
「ちょっと黙っててカラ松兄さん、今そういう状況じゃないから」
「え…あ、ス・・・スマン」
冷たい視線でトド松に言われると、グっと口を噤み下を向いてしまう。