第7章 ラーメン食べよう〜六つ子と私
「いらっしゃいませ〜!」
お店の中に入ると、夜中にも関わらず元気な店員の声が響く。
お疲れ様です・・・と心の中で思いながら、入り口近くの席に着く。
さすがに空いていて、もしかして客私だけかな?
と思った次の瞬間。
「すいませーん、注文いいですかー?」
奥のテーブル席から、とっても聞き覚えのある声が聞こえた。
店員がそのテーブルまで注文を取りに行くと、次々と聞こえてくる聞きなれた声、声、声・・・
「醤油ラーメン大盛り! 麺硬めで。あと生中!」
「あー・・・醤油ラーメンのハーフサイズで」
「僕も醤油ラーメン。並でいいです。あ、ネギ多めでお願いします」
「味噌ラーメン・・・並み・・・」
「ボクも味噌ラーメン!! 大盛りバリ硬でオナシャス!!」
「野菜たっぷりタン麺のハーフサイズお願いしまぁす」
コイツらやっぱり生まれた順に発言しなきゃいけない宿命を負っているんだな。
うん、きっとそうだ。
ってそうじゃないよ!え?!なんでいるの?!
夜中の3時過ぎだよっ?!
何こんな時間に仲良く兄弟全員でラーメン食べに来てんだよ!
仲良し?!仲良しなの?!仲良しだなぁ!
何も悪いことはしていないけど、反射的に身を低くしてしまう。
私はね、仕事帰りで疲れてるの。
私がここにいること知られたら絶対絡まれるし!絶対嫌だし!
メニューを広げ顔を隠すようにして縮こまる。
どうしようかなぁぁせっかく入ったけどやっぱり帰ろうかなぁぁ
でもさっき店員さんと目合っちゃったしなぁ・・・
何もしないで帰るなんて失礼だよねぇ・・・
ラーメンも食べたいっちゃ食べたいしねぇ・・・
もうラーメン腹になっちゃってるからねぇぇ
よし、決めた。
私はすぅっと息を吸い込むと、今出せる最高域の声色で店員を呼ぶ。
「すみませぇ〜ん、注文お願いしまぁ〜す」
「はーい、お伺いしまーす!」
早足の店員がこちらに来ると、小さな声で味噌ラーメンの並を注文する。
よし、後はさっと食べてささっと帰るだけだ!
六つ子のいるテーブルは店の一番奥、私のいるテーブルは店の一番入り口に近い場所。
広い店ではないので距離はそんなにないけど、この位置ならバレないでしょ・・・