第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
━━━━━━ まったく、今日はなんて日なのか。
今日ほどに、人生で気分が浮き沈みした日は今までにないだろう。
「あのね、カラ松」
横を向いてブツブツと何かを言って、体の前で握られたままになっているカラ松の拳にそっと手を重ね、目を伏せる。
突然の接触に、カラ松は視線を戻してナス子を見ると、ナス子も伏せた視線を上げ、お互いの目が合う。
「私、好きな人がいるんだ」
「え・・・・・・・・・そ、それはまさか、一ま━━━━・・・・」
「まだ続きがあるのっ・・・・その人にね、彼女が出来たと思って、実はさっきまですっごく落ち込んでたんだけど・・・・」
そこまで言うと、ナス子は重ねていただけの自分の手で、カラ松の拳をぎゅっと握りしめ、それをぐいっと自分の方へと引き寄せ、驚いた表情のカラ松の唇に、自分のそれを押し付ける。
「━━━━━・・・・!」
「・・・・違うってわかって・・・・今はね、すっごく嬉しいなんてさ・・・・単純だよね」
「ナス子・・・・そ、それは・・・・・・つまり」
「つまり・・・・・私も、カラ松のことが好きってこと、ですっ!」
ナス子がそう言うと同時に、カラ松の方から足がつま先立ちになるほど強く抱き締められ、ぐえっと色気のない声が漏れる。
だが、幸福感の方が上回り、抵抗する理由もなくナス子もカラ松の首の後ろに手を回して負けないぐらい強く抱き締め返すと、耳元で聞こえるカラ松の声が震えているのに気がついた。
「・・・・・っ夢じゃないよな・・・っ!」
「うん・・・・っ一生レンタルしておくれ! 返品不可、です!」
「もちろんだ・・・・! マイハニー!」
「うぐっふ・・・! その呼び方はやめて・・・・・・!!」
二人はお互いを抱き締める力を少しだけ緩め目を合わせて笑い、どちらからともなく唇を重ねた。