第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
低い声で静かに、だがハッキリとそう言われ、すぐに言われたことを理解出来なかった脳に言葉が浸透していくと、それは劇薬のように心臓に強い衝撃が走った。
「・・・・・っ・・・そ、そう・・・・・だよね・・・・っ」
駄目だ━━━━━・・・・・・
これ以上は、我慢出来そうにないと、ナス子の目から大きな涙の粒が手の甲にパタパタと落ちる。
一度決壊した涙腺は、止めようと思えば思うほど、次から次へと水が溢れ出して止まらない。
せめて、泣いているのを気付かれたくなくて、ナス子は俯いていた顔を更に深く俯かせた。
「━━━━ 一松と、楽しそうにしているナス子を見て、胸を掻き毟りたくなるほど不快に思った」
「・・・・・・・・・・・え? ・・・・・・一、松?」
思わず顔を上げてしまい、慌てて涙で濡れた頬と目を手で擦る。
泣いていることはバレていたようで、カラ松は上着のポケットから自分のハンカチを出すと、ナス子にそれを差し出した。
カラ松の顔がプリントされたハンカチに、思わず涙が止まり、これ幸いと言う様に顔を拭き、ついでに鼻をかむ。
「え・・・・・・?」
「あ・・・・・・ごめん、洗って返す・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
微妙な空気が二人の間に流れ、カラ松がふっと息を漏らすと、先程までの緊張した空気を一変させる。
「はは・・・・・・いい、それはナス子にやろう。まだ何枚も持っているからな」
「あ、う、うん・・・・・・・ありがと・・・・・・」
別にいらない、とはさすがに言える雰囲気ではなかったので、素直に受け取っておく。
「はぁ━━━・・・・・・すまない、ナス子。怖がらせてしまったな・・・・・・俺は別に怒っているわけじゃないんだ」
バツが悪そうにそう言うカラ松は、普段通りの、ナス子がよく知るカラ松に戻っていて、安心したようにナス子の身体から力が抜けて行く。