第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
「・・・・・・ごめん、一松・・・・・・私も、カラ松とちょっと話したいことがあるんだ・・・・・・」
握られた手を見つめながら一度ぎゅっと握り返すと、一瞬の間の後、今度は驚くほど呆気なくその手は離れた。
思わず一松を見上げると、廊下の灯りの逆光でよくは見えなかったが、その顔は笑っているように見えた気がした。
「・・・・・・そうだね・・・・・・それがいい・・・・・・」
力なくぶら下がっていた両手をポケットに入れ直し、一松は一度目を閉じると、大きく息を吸い、来た道を戻ろうと踵を返す。
「・・・・・・━━━━━ おい、カラ松」
「・・・・・・なんだ」
「あんまりそいつ・・・・・・・・泣かせんな。クソが・・・っ」
そう吐き捨てるように言って、猫背の背中は夜の闇へと溶け込んで行った。