第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
「・・・・・・ずっと二人でいたのか・・・・・・こんな時間まで」
低い声で、まるで責めているかのようにそう言われ、思わず肩を竦める。
カラ松が、怒っている。
理由はわからないが、その怒りは自分に向けられているということは理解出来た。
バッグを持つ手をぎゅっと握り締め、震えそうになる足に力を入れる。
背中でそんなナス子の気配を感じ、一松はポケットに突っ込んでいた手を出し、後ろ手にナス子の手を握る。
突然手を握られて驚いたナス子は、咄嗟に手を離そうとするが、一松の力が強く、それは叶わない。
一松が嫌なわけではない。
そうではなく・・・・・・
━━━━ カラ松が見ているのに。
そんなことを思ったことは一度としてなかったのに、今は一松と手を繋いでいる自分の姿を、カラ松に見られたくないと、ナス子は強くそう思っていた。
ぎゅっと眉を寄せ目を閉じたナス子が俯くと、カラ松がまた何か言おうと口を開くが、それは先に言葉を発した一松によって遮られる。
「そうだけど。なんで? 俺とナス子が二人で何処で何してようと、お前に関係ないよね」
「一松・・・・・・お前には聞いていない。俺はナス子に聞いているんだ、邪魔をしないでくれないか」
「はぁ? お前何様なわけ? ・・・何をそんなにイラついてんだか知らないけど、お前はそんなこと聞ける立場でもなければ権利もねぇよなぁ」
「一松・・・・・・!」
一瞬にして、二人の間に一触即発の気配が漂う。
総毛立ちそうなピリピリとした空気に、繋がれた掌からじっとりと嫌な汗を掻くのを感じる。
「━━━━━━━ あ、のっ!」
ナス子が思い切って声を出すと、二人の間に漂っていた空気が若干緩む。
カラ松と一松、二人の視線を浴び、一度ごくりと唾を飲み込むが、意を決して言葉を続ける。