第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
どれほどの時間が経ったのか。
恐らく実際はそれほど経っていないのだろうが、二人のいる車内だけは時間に置き去りにされたかのように変化がなかった。
時を動かしたのは、一松のほうだった。
「━━━━で? どうすんの・・・? このままここで、俺と夜を明かします・・・?」
「・・・・・・ふふっ、それもいいかも」
泣き疲れたのか、ナス子がそう言って力なく笑うと、一松は抑えていた苛立ちを隠せなくなる。
「・・・っなぁ、いい加減にしろよ、自分だけが今世界で一番不幸ですみたいな面して・・・・・・っらしく、ないんだよ・・・!」
思わず大きな声を出し勢いよくナス子を振り返る。
ナス子は情けない顔で一松と視線を合わせると、ごめんと一言呟いて目を擦り、鼻を啜る。
一松はバツが悪そうに視線を逸らすと、助手席のドアを開けて足を外に出す。
広大な駐車場の出入り口を見ると、店員と警備員が閉店の準備を始めていた。
「帰ろう。俺が運転する・・・・・・席代わって」
「・・・・・・うん、ありがとう、一松・・・」
言われた通りに席を代わり、一松の運転で帰路につく。
無言の車内、流れていく街灯や車のテールランプをぼんやりと見つめながら、ナス子はずっとカラ松のことを考えていた。