第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
踵を返し、足早に去っていく二人の後姿を見送る一松。
カラ松と腕を組んで歩く女が、一度だけこちらを振り向いたが、特に気にする事もなく一松は視線をナス子へと戻す。
ナス子は視線を自分の持つ食べかけのドーナツに落とし、しばらく二人の間にはただ沈黙が流れる。
さっきまではすごく良い気分だったのに、とそんなことを思い、一松は小さく息を吐いた。
すると、ドーナツを見つめるナス子の目から、ほとほとと涙が零れ始める。
「・・・・・・・・!」
ぎょっとする一松。
おろおろと首をキョロキョロさせ、自分の甘い飲み物を一口飲んで、静かに口を開く。
「・・・・・・なんで泣くの」
不用意にそう聞いた自身の質問を、一松は次の瞬間後悔することになる。
「一松・・・・・・私、さ・・・・・・」
「・・・・・・?」
「━━━━━━━カラ松のこと、好きみたい・・・・・・っ」
ドーナツを見つめていた視線を、こちらを瞠目している一松へと移し、眉を八の字に寄せて、細めた目からなおも涙を流しながら情けなさそうな表情で、ナス子は笑った。