第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
一松は、カラ松の気持ちを知っている。
知っているからこそ、この状況が理解出来るような気もするし、まったく理解出来ないような気もする。
裏に含みを持っている言葉に、いつもならここで涙目になるカラ松だが、今ばかりは反応が違った。
涙目になることもなく、真顔で席に座った二人を見ると、一松の言葉と状況を照らし合わせているかのようだった。
一言も言葉を発さず、ただじっとカラ松とその隣の女性を見ていたナス子が、そこで初めて二人から目を逸らし、手元に視線を移動させる。
「ほ・・・・・・ホントっ、偶然だねカラ松! 相変わらず仲が良さそうで何よりだよ~! そんな綺麗な彼女、もう絶対現れないから大事にしなね! あはは・・・・は・・・」
震えそうになる手を必死に抑え、無理をして笑顔を作ってからカラ松の方を見てそう答えると、真顔だったカラ松はぐっと不快そうに眉を寄せ、表情を歪めてナス子を真っ直ぐに見つめる。
その表情に、ナス子は目を見開いてまたもカラ松から視線を逸らせなくなってしまった。
「━━━何故、笑っているんだ・・・・・・?」
「・・・え・・・・?」
「・・・・・・そんなことを・・・・・・っそんなことを、ナス子に言われたくはない・・・っ!」
聞いたことのないカラ松の怒声にも似た声色に、何故かひどく心が痛んだ。
「━━━━行こう、モブ菜ちゃん」
「え? まだ飲み物買ってないじゃない」
「いいから、行こう」