第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
二人は昨日と同じように腕を組み、誰が見ても仲が良さ気な恋人同士だった。
「昨日ぶりですね。そちらの方・・・・・・あら? え? え?」
女は自分と腕を組んでいるカラ松の顔と、席に座った一松の顔を交互に見て困惑した様子だ。
「同じ顔・・・・・・もしかして、双子のご兄弟かなにか?」
「あ・・・・・・ああっ、そうなんだ! 言ってなかったか」
「言われてなぁい、んもうっ、カラ松くんったら・・・・ビックリしちゃったじゃない」
「すまんすまん」
「お二人もデートですか? 私達これから一緒に映画を見に行くんです」
状況がよく飲み込めず、一松は心中困惑しながらカラ松とナス子の顔を交互に見やる。
女の言ったことが何一つ理解出来ない。
昨日? 双子? カラ松くん? デート・・・・・・?
どのワードもまったく脳の処理を手伝ってはくれない。
ナス子は固まってしまったかのように、ドーナツを持った手もそのままに動かない。
ただ目の前に立つカラ松と、隣の綺麗な女から視線を離せないでいた。
「あの・・・・・・?」
返事がないことに、女が首を傾げる。
すると、しびれを切らした一松が、代わりに女の質問に答える。
「そうなんです・・・・・・いやぁ偶然だねク・・・カラ松。まさかこんなところで会うなんて・・・・・・デート? いつの間にそんな相手が出来たの、お前。 聞いてないんだけど。 映画? ああ、そうなんだ、楽しんできなよ。こっちも二人で楽しい時間を過ごすからさ」
言い方は普段より柔らかく優しい言葉遣いだが、一松の表情は険しく、彼を知っている人間ならば、彼が今どんな感情を抱いているかは明白である。