第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
やり始めると止まらなくなり、まだ東方にあった太陽は、すっかり向きを変え西に傾いたが、ナス子はまだ家の中の掃除に精を出していた。
「一つ綺麗にするとアレもコレもってやりたくなるよね・・・はぁ~、でもさすがに疲れた・・・・・ちょっと休憩しよっか、ミケ子」
足元に擦り寄って来た愛猫にそう声をかけ、今日一歩も出ていない外の空気を吸おうとベランダに出る。
大きく伸びをすると、集中していたせいか気にならなかった身体の部分的な痛みに顔を顰める。
「っう~~~ん・・・・・・っは━━━・・・・・・こんなに一生懸命部屋の掃除したのっていつ以来だろ・・・」
ついにはテレビ台や棚という棚の後ろなど、普段なら絶対気にならない所まで、重い物を動かしながら掃除をしてしまった。
「掃除って疲れるんだなぁ~・・・・・・」
そう呟くと、普段そんな疲れることを文句の一つも言わずやってくれていたカラ松の姿が脳裏に浮かぶ。
さすがに普段から棚を動かしたりしてはいないだろうが、それでも、ここ最近ナス子の部屋は綺麗に整理整頓と掃除がされており、今更ながらカラ松がしてくれていたことの有り難味を実感した。
「・・・・・・・・・・カラ松ぅ~、私自分で片付けも掃除もしてるぞ~・・・・・・なぁんで手伝いに来ないんだよう・・・」
ベランダの柵に顎を載せ、自分でも理不尽とわかっている悪態をつく。
なんとなく、見えるはずもない松野家の方向に視線を移すと、目の前の道に見慣れた人物を見つけ、思わず柵から上半身を乗り出して目を見張った。
「━━━━━カラ松・・・っ」
ミケ子が室内にいる事を確認してベランダの戸を閉め、すぐ帰ってくるからねと一言愛猫に声をかけると、急いで家から飛び出して道路に出る。