第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
だが、カラ松は未だ自分の気持ちを素直に認められないでいた。
人に言われた言葉だけで、すぐフラ付いてしまう気持ちなど、果たして本当に「それ」と言えるのだろうか。
やはり、幼馴染や、姉弟としての「情」なのではないだろうか━━
「・・・・・・っあ゛━━━!! もうっ! わからん゛っ・・・!!」
「きゃっ・・・!」
思わず釣竿を思いっきり振り上げると、偶然そのタイミングで後ろを通りかかったカップルの女の方に浮きの水が撥ねてしまう。
突然後ろから聞こえた悲鳴に、カラ松は驚いて立ち上がり、謝罪をする。
「すっ、すみません! 大丈夫、ですか?!」
「おいおい、何してくれてんだよ兄ちゃん、俺の女が濡れちまったじゃねぇか」
女の肩を抱いた男がカラ松を威圧するが、すぐに女が止めに入り、事なきを得る。
「ちょっとぉ、わざとじゃないんだし、謝ってくれたんだからいいじゃない、せっかく楽しく釣りに来たんだから・・・怒らないで? ねっ?」
「モブ代ちゃんがそう言うんならいいんだよぉ~、おい、気をつけろよな! いこっか~モブ代ちゃんっ」
ベタベタとくっつきながら釣堀の奥の方へと移動していく二人を、カラ松はなんとなく見送って、座りなおす。
そういえば、今日は日曜日だったな、とそんなどうでもよいことを思い、再び釣竿を手にして何もついていない針を池の中に落とした。