第50章 【カラ松ルート】レンタル彼女、始めます
その日、松野家に生まれし次男・松野カラ松は悩んでいた。
最近ぼーっとすることが増え、今日も大切な自称パーフェクトサングラスを家に置き忘れて来てしまった。
パチンコや競馬に行く気分にもなれず、ただなんとなく家を出て、なんとなく一人釣り掘りへとやって来て、池に糸を垂らしている。
餌もつけることもなく、当然魚など食いつきはしない。
先日、一度は勘違いということで解決したものが、思ってもいない形で掘り起こされた。
ナス子のことが好きだという感情を、一度はナス子自身に、そして一松に勘違いだと否定され、自分も納得した。
しこりが残っている感じがしなくもなかったが、それさえも気のせいだろうと見て見ないふりをした。
そのしこりを、まるで大きくなっているとでも言うように、トド松にぐりぐりと押されたことで、再確認せざるをえなくなってしまったのだ。
「・・・・・・・はぁ・・・・・・」
口から漏れるのは溜め息ばかりで、いつものようにイカした台詞も浮かんではこない。
春の陽気は温かく降り注いでいるというのに、カラ松の心は曇っていた。
まったく動く様子のない浮きの先を見つめ、一人物思いに耽る。
薬の一件以来、カラ松はナス子宅に足を運んでいなかった。
しこりの正体が判明してしまった為か、そうでないかはわからない。
ただなんとなく、ナス子に会いたくなかった。
会ったら、またあの言葉を、ナス子の口から言われるのは目に見えている。
それを聞きたくない。
『勘違い』━━━━・・・
ナス子の口から出たその言葉が、今となっては思い出す度に強く胸に刺さる。
少しどころではない、大変に不快だ。