第49章 【一松ルート】マイナス端子の恋
「どう?こんな酷い事言う俺なんかに、まだ会いたかったとか思う?」
ナス子が初めて見る、一松の苦しそうで悲しそうな表情。
そしてナス子は、そんな一松の表情から・・・自分が恐れていた事が違ったという事がハッキリとわかった。
「ば・・・・・・っかじゃないの?!なんでそういう顔してそんな事言うかねアンタは!!さっきから会いたかったって言ってるでしょうがバカチンがぁ!!」
涙を流しながらも、笑って取り繕うように、一松の背中を思い切り叩く。
「・・・っ!」
ナス子の渾身の攻撃はいつも痛い。
中々のクイックを効かせて叩かれた背中はジンジンしたが、普段のやりとりのそれに一松は少しだけ温かな気持ちが蘇る。
「あのねぇ、幼馴染でお姉ちゃんだよ私!一松がそういう顔して酷い事言ったってどうせただの皮肉だってわかるんだけど?!」
「じゃあ、なんで泣くの?」
叩かれた背中を痛そうに丸めながら、一松はナス子の顔を見る。
ナス子は一向に涙を流したままだが、笑っていた。
どう見ても変なヤツだ。
「な・・・んでだろ…、一松の言葉が嘘ってわかってるのに直接言われてムカついちゃったのかなぁ?アハハハ」
「チッ・・・素直じゃないのはどっちだよ」
泣いたままのナス子に体を向けると、一松はぎこちなくナス子の肩に手を回し引き寄せる。
その動作に、ナス子も震えながら伺うように一松の腰に手を回した。
「・・・い、一松・・・あの、私の事嫌ってない?」
「はぁ?嫌いだけど?って言ったらどうすんの?」
「悲しい!・・・かっ・・悲しいよっ・・・うぇ・・・うっ・・・」
ついさっきまで笑っていたが、一松の体温を感じると途端ナス子は安心したのか涙が更に溢れ出す。
もう笑う事はなく、一松の胸に顔を埋め声を上げて泣いた。