第49章 【一松ルート】マイナス端子の恋
そして場面は変わりナス子のマンション。
次の日も相変わらず松の誰かがやってくるのだろうと思い、ナス子は聞きたい事があり先に待ち構えていた。
案の定チャイムが鳴り、急いで扉を開ける。
今日の松は緑の松、チョロ松である。
口をへの字にしながら困ったような顔で立ち尽くすと、差し入れを手にポリポリと頬を掻いていた。
「や、やぁ、ナス子。ちょっとそこまで用事があったからついでに顔・・・見に来たんだけど・・・」
淡い期待を抱き、一瞬でも一松が来てくれたのではと思ったナス子だが、一番気心の知れる親友の顔を見て安心すると、感情とは裏腹に悲しげな表情になる。
「・・・あ、チョロ松・・・いらっしゃい・・・・・・」
「・・・? どうしたのお前、変な顔して」
普段から他の兄弟達よりも付き合いの深いチョロ松は、すぐにナス子の表情の変化と様子に気づくと、今は告白どころではないと思い、顔を覗き込む。
「チョロ松・・・・・・毎度毎度申し訳ないとは思うんだけど、また相談・・・乗ってくれないかな?」
「相談・・・? 別に構わないけど」
開口一番にこう言われ、ナス子はやはり頼れる自分に気があるのではと多少期待したチョロ松だったが、その期待は数分後に脆く崩れ去る
コタツに座り、二人向き合うと同時にお茶を啜る。
いつも口数の多いナス子が不気味な程静かで、チョロ松はお茶を啜りながらもナス子を覗き見る。
いつまでも口を開かないナス子に、チョロ松がしびれをきらす。
「━━━で、相談って?」
「う、うん、あのね・・・・・・い、一松、元気?」
「は? 一松?」
「うん」
こう聞いてくるということは、ナス子は一松としばらく会っていないということだろうか。
昨日の一松の様子を思い出し、その予想は恐らく当たっているのだろうと推測する。
いつ頃から会っていないのかは判断が難しいところだが、薬の一件があった辺りが怪しいと思い当たる。