第49章 【一松ルート】マイナス端子の恋
「━━━━別に、普通に元気だよ? なんで?」
目の前にいるナス子は自分の想い人だ。
他の男の話なんてその口から聞きたくないとは思うが、六つ子と言えど一松は自分の弟。
二人の関係が拗れてしまうのは幼馴染としてはあまり宜しくない。
だからと言って、自分が仲を取り持ち二人がどうこうなってしまったらと思うと、今ばかりは親友とはなんて損な役柄なのだろうとチョロ松の心中は複雑だ。
「そ、そっか! 元気なんだね!! 良かったぁ」
ホッしているような声を出すが、それとは裏腹にナス子の表情は晴れない。
まだ何か相談の真意が吐き出されていないのだろう。
「ナス子、一松と何かあったの?」
そうは聞きつつも、会っていない相手とどうこうなるものだろうかと思う。
トド松のようにスマホを持ち、連絡手段を持っているなら話は別だが、一松はスマホを持っていないし、むしろ電話をしている姿もほとんど見たことはない。
「・・・・・・あると言えばあるし、ないと言えば、ない?」
「はぁ? 何それどっち?!」
「いや、私が勝手に勘違いしてるのかもなんだけど」
「うん?」
再びナス子は湯飲みを両手で握り閉めると、決心したかのように自分の心中をチョロ松に告白する。
「最近、ていうか・・・この間、私がそっちに遊びに行った日あったでしょ? あの日以来ね、一松が私の家に一度も遊びに来ないんだよ。前は頻繁に遊びに来てくれたのに・・・」
「あー・・・」
やはり考察は当たっていた。
一松はナス子にもう何週間も会っていないと言う事になる。
特に復讐する理由がないのに復讐の為に生きているような一松でも、心臓を見れば繊細なガラス細工のようなハートを持つ弟だ。
ああ見えて兄弟の中で一番気を遣って、一番人の目を気にする。
多分一松はナス子に嫌われたと、勝手に勘違いしているのではないだろうか。