第49章 【一松ルート】マイナス端子の恋
「あ~あの時ねぇ、あの時は一松がいっちばんわかりやすかったもんな! なんて言ってたんだっけぇ? さすがにアレはナス子も一番怖がってたんじゃないの~? もしかして一松も怖がられた事が怖くて会いに行けないとかぁ? んなははは」
「おい、今そういう事は言うなって馬鹿長男!」
チョロ松の静止も空しく、一松が突如立ち上がりおそ松の胸倉を掴む。
そう、一松は先日の薬の一件で、ナス子に本音をぶちまけた。
おそ松が言った通り、その際にナス子を怖がらせてしまい、その事が一松の中で大きく尾を引いていた。
伝わらないだけならいい。いつかは伝わるかもしれないし、伝わらないなら伝わらないで、ただずっと好きでいればいいだけだ。
たとえ、ナス子が誰か他の兄弟と付き合うことになったとしても、思うだけなら自由だから。
だが、嫌われたり、怖がられたり、避けられたりするのは━━━━
それは、無理だ。
考えるだけで、心臓が粉々になる気がした。
「おい、おそ松! 今のはよくないぞ、一松に謝るんだ!」
「黙ってろクソ松・・・・・・!」
庇ってくれたカラ松など意に介さず、なおもニヤつき余裕ぶる長男の態度になのか、自分の気持ちを的確に指摘された悔しさからなのか、赤いパーカーを掴む拳が小さく震える。
「なぁに~? いちまっちゃ~ん、俺に喧嘩売ってんのぉ? 俺も今ちょーっとイラついてるから喧嘩なら・・・・・・・・本気で買うぞ、一松」
ニヤついた表情を一変させ1トーン低くなったおそ松の最後の台詞に、一松は拳に強く力を入れるが、そのまま睨み合うと、舌打ちをして乱暴にパーカーを掴んだ手を離す。
「・・・・・・・・・っクソが!」
かろうじて一言そう吐き捨てると、一松は荒い足取りで部屋から出て行ってしまう。
残った兄弟達は、微妙な雰囲気に居心地の悪さを感じながらも、黙って一松の背中を見送るのだった。