第49章 【一松ルート】マイナス端子の恋
一松が膝に顔を埋めると、ニュっと元気な十四松の顔が近づく。
「一松兄さん! 姉さんと会ってないのー?」
「・・・会ってない」
「えぇ?! あんなに頻繁にナス子姉の家に遊びに行ってた一松兄さんが?! ずっと好きだったのに告白も出来ず、自分の繊細なハートを守りながらも、それでも多少の期待を込めてちょこちょこアプローチしてみても気づいてはもらえず、ただただ猫に会いに行くという名目で、自分の気持ちを押し殺してでも通い続けた一松兄さんが?!」
「何勝手に推理して人の気持ち決め付けてんだよ、殺すぞトド松・・・っ」
「うわっ、コワー・・・」
そうは言っても、ほぼトド松に言われた通りなのでイラつくばかりで反論は出来ない。
人心掌握術の達人・末っ子トド松恐るべし。
一松が、何度も言ってしまおうかと迷っていた言葉。
一度封印しようとも考えた気持ち。
『好き』と言う言葉が、自分にとっていかに重い言葉なのか、一松自身わかっている。
そして、その反対に、ナス子は割と頻繁に他意なく『好き』という言葉を使う。
だからこそ難しいのだ。
こちらが『好き』と言った所で、恋愛としての『好き』は絶対に伝わる訳がないとわかっているから。
幼馴染として、弟として、と捉えられてしまうのは目に見えている。
そしてそれは、自分のことは男性として見ていないと言われているも同じだった。
他の兄弟達の会話を聞いていても、それが手に取るようにわかる。
そしてもう一つ、会いに行けない理由がある。
「ねぇ一松、もしかしてお前・・・さ、この前のナス子のイタズラの事で何か気にしてる?」
チョロ松に言われた言葉にビクリと体が反応するも、それを気にしないような動作で顔を膝に埋めたまま返事は返さない。