第48章 【トド松ルート】小さな努力
でも、それはきっと自意識過剰なんだ。
もし勘違いして期待して、自分もドキドキしてしまっているなどとバレたら・・・きっとすぐまたからかわれるに決まっていると思っていたのだが、こんな真剣な瞳と囁きのように喋る声に、最早否定する余地がないと言う事を知ら絞められているように感じてきた。
「あの、い、一旦外に出ない?」
「うん、じゃあオヤツでも食べる?」
やっと絞り出した声にトド松が優しくニッコリと返事を返すと、絡められた指はそのままに店を後にする。
有名なジェラート店へと入り購入すると、外にあるベンチに二人で腰掛け無言で座った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互い違う味を購入し、口を開くことなく黙々とジェラートを食べている。
トド松はボケっと前を向いてスプーンでジェラートを掬って食べていたが、ナス子はそんなトド松の様子をチラチラ横目に見ながら食べていた。
これは・・・私がトド松を意識してるって事でいいのだろうか。
でも、今は彼氏として一緒に出掛けてる訳だから、ただ自分はこの場に酔っているだけなのでは・・・でもでもそう考えると、最近ウチに遊びに来ているトド松の事も少し気になっていたのもおかしくなる訳で・・・・・・
頭の中に回る感情がグルグルと邪魔をして、何を口に出していいのか全くわからない。
トド松もトド松で、顔はボーっとしてはいるが、頭の中では何か考えているようだった。
おかしい、もっと時間をかけてゆっくりと口説いて行くハズだったのに…どうしてぼくは今、しかも店内であんな事を言ってしまったのか。
確かに兄さん達に負けたくないと言う競争心はある。
だけど、負けたくないと言うよりは、姉さんをとられたくないし、ぼくだけのものにしたい。
我慢しようにも勝手に口から言うはずもなかったあんな言葉を吐いてしまい、きっと姉さんは困っただろう。
もう、完全にキャラ崩壊だ。
ぼくって他の女の子が相手の時はもっと優しくスマートに出来てるハズなんだけどな・・・
それと違って姉さんにはいつももっと悪戯な事とか辛口な事とか言ってばっかりだったのに…なんで今日は……
『『━━━どうして・・・?』』