第48章 【トド松ルート】小さな努力
「買ってしまった・・・こんな、いかにも女の子です!みたいな服を・・・私が買ってしまった、ついに私が買って━━」
「わかったわかった、もうそれ何回言ってるのナス子、似合ってたんだからいいでしょ? ぼくが選んだものに間違いはないんだから!」
購入した袋を手に持ち、何度も自分らしくないと連呼する相手に仕方なさそうに答える。
実際可愛いと思ったし、触れたくなってしまった、あんな場所でそんな事が出来る訳もなく、また二人は手を繋ぎ買い物を続ける。
「あ、ここの雑貨店可愛いんだよナス子! 輸入雑貨とかもいっぱいあるし、見てるだけでも面白いんだよねぇ」
まだ入るとは言っていないが、引かれる手に強引に店の中へと導かれ今度は雑貨店へと入って行く。
今度は何を買うのだろう?と思ったが、二人で何を買うでもなく中を堪能している。
「おっ、こんな所に猫のマトリョーシカ発見デイ!! マトリョーシカってコケシみたいな感じなのかと思ったけどこんなのもあるんだねぇ」
「コケシって・・・どれだけ外で買い物してないのナス子って・・・、ほんと女子力皆無なんだから」
「またそうやって皮肉を言うんだから・・・ねね、これ一松にあげたら喜ぶかな?!」
デート中だと言うのに、突然に兄の名を出され少し眉がピクリと動く。
「はぁ? 一松兄さんにあげるの? 別にプレゼントする必要ないんじゃないの・・・猫好きだけどこういうの好きかわかんないし」
そう答えるも、きっと一松はナス子から大好きな猫グッズをもらえば素直に喜ぶだろう。
それもトド松はわかっているのだが、余計な事はさせたくないし、今はデート中なのだからその名前は聞きたくはない。
「そうかなぁ? 好きそうなのに・・・あ、あれあれ!」
あまり外にショッピングになど出ないナス子は無邪気にトド松の手を引くと、見たもの見たものに興奮して嬉しそうに笑っていた。
まるで自分が子供を連れた兄のようにも見えなくはないが、相手は年上で想い人。
無邪気な表情につられ、自分までクスリと笑ってしまう。
そんな温かな感情が・・・心臓のないドライモンスターにもジワジワと身体を伝わってきている。