第48章 【トド松ルート】小さな努力
「はぁ?! ないないない、私が男の人と出かけるなんてある訳ないでしょ! 普段から一緒にいる男って言ったら残念な事にアンタ達くらいなもんだよっ」
これは、喜ぶべきか突っ込むべきか。
いつも余計な一言が多いと姉さんは言うが、それも大概だとトド松は思った。
「だ、だよねぇ!さすが残念姉さんなだけあるよっ、相手をしてくれるぼくらがいて良かったねっ」
「不意な残念返しやめてもらえます?!」
安心からか機嫌も良くなると、ニコリと笑いかけまた机の上に視線を戻す。
トド松の視線に気づいたナス子は一瞬忘れかけた頼みを思い出し、真剣に相手の目を見ると口を開いた。
「実は今から服を買いに行きたいんだけど、私さ、季節に合わせた服なんて持ってないし、トド松に言えば付き合ってくれるかなぁって思って・・・お洒落で可愛いトド松先生!! 一緒に買い物付き合ってくれませんか?! お願いします!」
おっと、これは予想外の予想外だ。
自分にとっての得意分野であるショッピング、そしてコーディネートなどなど、今回の自分はツいてるのではないだろうかと胸が高鳴る。
しかもいつも自分はダサい姉さんばかりを口説き落とそうとしていたが、今日は化粧もするしちゃんと私服にも着替えるらしい。
まるでデートのようなそれは、トド松にとっては最高のシチュエーションだった。
「全く、しょうがないなぁナス子姉は! ぼくがいないとこの手の事はな~んにも出来ないんだからさっ」
「うっ・・・それは・・・心得ております」
「良かったねぇ、ぼくみたいな優秀な人材が近くにいて!仕方ないから付き合ってあげるよ。はぁ~」
これ見よがしにわざとらしく肩を竦め溜息をつくも、心の中では大きくガッツポーズをッシャー!ッシャー!!とつくトド松である。
今日一日はぼくがナス子姉を独占し、デートまで出来た上に、まるで彼氏のような関係になれるのではと期待に胸を膨らませた。
そして、決意も新たに再度心の中で今日こそはちゃんと自分の気持ちを理解してもらい、あわよくば最後まで・・・とクズな妄想をするのであった。