第48章 【トド松ルート】小さな努力
前回、一緒に下着を買いに来たモールに二人でやってくる。
ナス子はトド松指導の下、珍しくも大人しく、拗ねることなど一切なく、化粧らしい化粧を施してもらうと、今持っている服では一番マシな洋服も共に選んでもらい、二人手を繋いで歩いている。
「ねえ、別に手は繋がなくてもよくない?」
「えー、別にこれくらいいいでしょ? 前だって手繋いだし。 それに姉さんだってぼくに頼み事してるんだからぼくの頼み事だって聞いてくれてもいいんじゃないの??」
ニヤリとアヒル口を上げるトド松は、タダでは引き受けず、代わりにとナス子に条件を出した。
今日一日は自分が彼氏だという事、女性の服を買いに行くのに弟と一緒に来た、と言うよりは彼氏と来た、と言う方が名目的にもいいと説得すると、単純なナス子もそういうものかと納得し今に至るのだ。
実際おそ松はナス子の彼氏役を演じた事がある。
その話を知っているトド松は、実はそれが羨ましかった。
だからこそ今のタイミングで、今の彼氏と言う位置はとても清々しい。
手を繋いで少し恥ずかしそうにする相手の顔すらも自分の優越感を煽らせた。
実際、ナス子が自分達兄弟の事を多少なりとも意識している事は前回の薬の件からなんとなく察している。
だがしかし、いくら気持ちを伝えても伝わらないのは、ナス子が愛される事に自信がないからだと言う事も、人心掌握術の達人であるトド松自身は気づいていた。
「あー、緊張する! こういうお洒落な所ってどうしてこうもお洒落な人がいっぱいいるんだろう・・・トド松もよくこんな所に普通に来れるよねぇ」
「ふふっ、大丈夫だよ!今日の姉さんはちゃんと可愛いしお洒落だからね、何も浮いてないしぼくだっているんだからさっ、堂々としてなよ、ね?」
「か・・・可愛いとか、別に言われても・・・しかも『今日の』って言ったね?! 余計なお世話だしっ!」
いきなり褒められた事にポカンと口を開けたが、言われた言葉を理解すると、途端ナス子の頬がピンクに染まり、フンと横を向いてしまう。