第48章 【トド松ルート】小さな努力
珍しくナス子のコタツの上に化粧ポーチと化粧グッズが綺麗に並べられている様子を見ると、あまりの奇跡に驚愕という表情で慌てだした。
「え、どうしたのこれ?! なんの心境の変化?! 原始人からちょっと進化でもしたの姉さんっ」
「おい、キミキミ、私はいつから原始人になってたのかな!?そんな布一枚で外を歩き回るような人種じゃないんだけどっ」
文句を言いながらもコタツへと二人掛けると、ナス子は手を組み神妙な面持ちで前に座るトド松に視線を向ける。
「な、なにナス子姉? とうとうぼくの事好きになっちゃった~!とか言っちゃう??」
「だからなんなの! 最近のそのアンタ達のいじめは?!」
いじめじゃなくて、本気なんだけどなぁ・・・
と思うも、自分で立てた作戦やネットの知識は全てやり尽くし、普段は勝ち戦しか挑まないトド松は頬杖をつきながら不貞腐れてナス子を見た。
「で? なんで急に呼び出した訳? ここにある化粧グッズ見るからに、どっか出かけようとしてるのはなんとなく察しがつくけどさ」
お決まりのように毎日家にいる時はパジャマ、外に行っても化粧は一切しない、面倒臭がりのナス子がまるで明日地球がなくなるのではないかと思うくらいちゃんとした化粧グッズを目の前においている。
そういう時は何か気合を入れなくてはいけない時だと自分は知っていた。
「さすがトッティ、話がわかるねぇ! 出かけるって言っても今日じゃないんだけど、今度友達と一緒に遠出するからちょっとちゃんとして行こうかなって思ってさ?・・・」
「ふーん?ナス子姉にしては遠出とか珍しいね・・・まさか、男、とじゃないよね?」
正直自分達以外の男とはナス子は連まないであろうとだいたいの察しはついている。
ついてはいるが、それでも全ての人間関係を知っている訳ではない。
ここは一応確認しようと相手の顔を覗き込むと、両手を勢いよくぶんぶん振って否定する。