第44章 私が気持ちよくなる薬を六つ子に飲ませました 六つ子と私
だが、いくら陥れて来ていても褒めてくれているのにはかわりないので気持ちいい気分になっているのも本当である。
「ナス子姉ってさ~、ぶっちゃけモテるでしょぉ? だってぼくらといる時以外は大体笑顔だし、気さくだし、人見知りと言っても誰にでも分け隔てなく接してる訳だしさ。職場でも、お客さんがナス子姉を好きになっちゃう事とかあるんじゃない?」
「「「「なんだって?!」」」」
「それはない! 絶対にない・・・っ、さすがにそんな目でお客さんに見られた事はないよ?! 何馬鹿な事を・・・って言わせてんの薬か・・・ちょっとビックリしたぁ」
「でもお前セクハラとか受けてんじゃん。お前みたいに隙が多くて綺麗かつ仕事を一生懸命やってて、汗かいて笑ってる姿なんて見たら客もちょっとグっとくるんじゃねぇの?俺だったら惚れるね、絶対!」
「はい?」
「アッ、薬が!薬が俺に変な事言わせてくるぅ━━━━━━ハハハハ!」
急に何を言い出すのかと目を細めたが、おそ松の発言に確かに薬の効果で言ってしまっているのだなとナス子も納得する。
ふと肩に手を置かれ、見上げるとチョロ松が立っていた。
そういえば、いつもは突っ込みで忙しいチョロ松が今日は静かだなと今更ながら思う。
「お姉ちゃんさ、髪、適当に手ぐしで整えてきただろ・・・そういう適当でルーズな所もいいと思うけど・・・こっち来て後ろ向いて座って、やってやるから」
「あはははは、バレたぁ? でも急になに? てか櫛持ってんの?女子?!」
「ナス子姉が女子力がないだけでしょ、そこも拘りがなくていい所だけどさ!櫛ならぼくが持ってるよ、ハイ、チョロ松兄さん」
チョロ松はナス子を座らすと自分の足の間にナス子を入れるようにして櫛を髪に通す。
「は~・・・人に頭触ってもらうのって気持ちいい~」
ほんのりナス子の髪から香るシャンプーの匂いに、以前の風呂場での妄想、もとい夢を思い出してしまうチョロ松。
スルスルと通していた櫛を通す手が一瞬止まった。