第44章 私が気持ちよくなる薬を六つ子に飲ませました 六つ子と私
「そうそう、差し入れ持って来たんだった!!」
「「「「「「差し入れ?」」」」」」
ナス子は傍らにおいていた紙袋の中から白い箱を取り出すと、六つ子全員に見えるようにそれを高く掲げる。
「はい!今川焼買って来たよ、ちゃんと6個あるし、中身は全部一緒のクリームにしたから喧嘩しないでね?」
「今川焼?! わぁ、あの時の命がけの戦いを思い出すね・・・」
床を転がっていたトド松がやっと痛みが治まったのか、ナス子が持ってきた箱を受け取る。
「へぇ、ナス子が自分から買ってくるとか珍しいじゃ~ん! いつも持ってくるのは会社でもらった差し入ればっかだしな!!」
「ぅ・・・ケンダッキーとか買ったでしょ!」
「そうだっけぇ?」
早速と、おそ松はトド松が部屋の真ん中に置いた箱を空けて中身を一つ取り口へ運ぶ。
「ん~、んまぁい!」
「皆もほら、出来立てだから冷めないうちに食べるといいよ」
そう言われると全員が今川焼きを手に持ちそれぞれが食べ始める。
トド松だけは今川焼を半分に割ると、ナス子にそれを差し出した。
「へ?どうしたのトド松? 食べていいよ」
「だってこれ6個しかないでしょ? 姉さんの分入ってないじゃん、ぼくと半分こしようよ」
優しいトド松の申し出だが・・・ナス子はその優しさに大いに慌てる。
実はナス子の企みは、まずこの今川焼を各自に食べさせなければ成功しないのだ。
「大丈夫だよ、トド松! 私はさっき家で食べちゃったんだよ~、だから一人で食べて? 気持ちだけはもらったから!」
「んー、そう?? じゃあもらうね?」
「そうそうトド松、ナス子にそれ以上食べ物与えたらせっかく最近ちょっと痩せてきた体が元に戻っちゃうだろ~? 出荷されないよう食ってやれよぉ」
「お前は静かに食えないのかクソ長男め!!」
「静かに食べてますけどぉ?」
「人をチンパンジーとかカピバラとか言っておいて、今度は豚か何かにしようとしてるでしょ?」
いつものようにおそ松と口喧嘩をしながらも、ナス子は全員が今川焼を食べ終わったのを確認するとチラリとスマホの時計を見て視線を戻す。