第1章 平穏な日々に嵐はやってくる~おそ松~
怒りで身体をワナワナさせながら寝室に戻る。息も若干乱れた。
いつの間にか体制をかえて人の布団の上でゴロ寝をきめている長男。腹立つコイツ。
そんなおそ松を恐らく鬼のような形相になっているだろう私が見下ろす。
息を整えるため一度大きく深呼吸
「返しなさい」
「なんで?」
鼻くそほじりながら首を傾げキョトンとする。
あーっ、憎たらしい!ホント腹立つわ~
さも自分は間違ったことなんて一つもしていませ~ん、という態度だ。
「それは私の家の鍵で勝手に持ってっちゃいけないものなの! いつか使うかもだし。
てかあんたら、もう成人越えたいい歳した男子がやる事かっ、返せっ!」
「おっと」
取り返そうとして手を伸ばしたが、素早い動きで軽々と避けられた。
運動なんてまったくしないニートのくせにこういう動きだけは早い。
「あれあれ? ナス子また太った?動きが鈍いねぇ。昔はあんなに細くて運動神経だけはよかったのに
月日って怖いねぇ~」
ごろ寝をキメ込んだと思ったらひらりと起き上がり鍵を頭上に掲げる。
身長が小さい私は手を伸ばしても正直届かない。
コイツと何かを取り合うとだいだい負けるし埒が明かない。
とりあえずここは落ち着いてリビング行こう。
「あれ? 鍵はもういいのー?」
後ろからおちゃらけた声が聞こえるが無視。
まずはおそ松を私の聖域(布団)から離さなければ。
鼻クソとかつけられたら嫌だし!コイツやりかねないし!
「後で返してもらうからいい。
で、なんの用?わざわざムカつく登場の仕方してきたって事はなんか用があってきたんでしょ?」
口を尖らせてぶつくさ言いながらもお茶を二人分用意すると、リビングのコタツの上においた。
さっきお茶も出ないなんてぶつくさ言ってたから出してあげたわけじゃないからね。
い・ち・お・う、オキャクサマのコイツに、常識のある社会人の私は常識のある客人のもてなしをしただけだからねっ
「このお菓子、会社でもらったんだけど食べていいよ」
リビングに誘導するべくお菓子まで付けてやる。
ぶつくさ言われたからじゃないから!私は一般常識にのっとり(略)
うぅ、私の大事な休日。
「マジ?! なんの菓子かしらねぇけど食う食う」
釣れた。
松野おそ松、上手なところもあるが単純なバカでよかった。