第5章 平穏な日々に嵐はやってくる~十四松
「あ~~~ナス子姉の手って気持ちいいよね~ぼく好きだな~」
「ホントー? そう言われると嬉しいな」
「肉厚で、ぽよぽよしててとっても気持ちいーー!! いーでででで!!」
掌で優しく撫でていたが指にぐっと力を入れてぐりぐりとわざと顔のツボを押すように撫で繰り回してやる。
「あららら、そんなに褒めてくれるとお姉さん嬉しいな~~ありがとぉ~~」
「ふ、太ってるって意味じゃないよー?! ぷにぷにしてて、おまんじゅうみたいだな~って」
フォローになってねぇよ!!
掌を頭の上に移動させギリギリとフィンガークローをかましてやる。
「いでででで! ちょちょちょっと待って! 地面にめり込む!めり込むから~~~!」
「そこまで力ないよ!!」
「あれ? 姉さん、これなに?」
「え?」
視線が下に向いた十四松が、急にそんなことを言ってくるもんだから思わずきょとんとしてしまった。
十四松から手を離し、指差された袋を肩の高さまで上げると、十四松がくんくんと鼻をひくつかせる。
「ケンダッキーっすか!! いい匂い! いい匂い!!」
「当たり~。 君んちへの差し入れだよん。 カラ松から揚げ好きでしょ」
「マジすか! わーい!! ケンダッキー! ケンダッキー! ぼくも好きだよ! ねぇねぇそれ今食べたい!!」
「え、今?! お腹すいてるの?」
「うん! 肉食べたい!!」
あ、思わずカラ松の名前を出してしまった。
・・・気にしてないっていうか、気づいてもないみたいだし、大丈夫か。
十四松だもんね。いちいち突っ込んでこないか。
今も滝のような涎を垂らしてケンダッキーに夢中だし。
「もちろん十四松の分も買ってあるけど、今食べると後でみんなで食べる時に十四松だけ1個になっちゃうよ?」
「あ~~そうなの? ん~~~~~でもやっぱり早く食べたいなぁ、今食べたいなぁ」
今にも袋に手を突っ込みそうな勢いで鼻をひくつかせながらぐいぐいとこちらに迫ってくる。