第5章 平穏な日々に嵐はやってくる~十四松
「わ、わかったよ、今一つ食べな・・・でも、十四松の分は一つ減っちゃうからね」
言いながら袋から一つチキンを取り出し、十四松に渡してあげる。
「ありが特大サヨナラホーーームラン! いただきマッスルゥ!!」
ガブリと勢いよくそれに食いつく十四松。
ホントに美味しそうに食べるなぁ・・・それだけ喜んでくれるなら買ってきた甲斐もあるってもんだよね。
一度開けた袋を閉めようがさがさしていると、チキンを食べているとは思えないガリガリボリボリという音が聞こえてきて、思わず顔を上げる。
見ると、十四松が軟骨だけでなくもう、なんか、えっと、全部食べている。
「カルシウム!!」
「それはいいけど、鶏の骨は喉とかに刺さりやすいから気をつけて食べて・・・」
「あい!!!」
そしてチキンを平らげると「ごちそうさまでした!」と手を合わせる。
いや、普通ケンダッキーのチキン食べた後って骨とか骨とか、残るもんじゃないの?
「美味しかった!!」
「それはよかった。喉渇かない? お茶あるよ」
「もらいマーッスル! ありがとー姉さん!」
ごくごくとこれまた美味しそうにペットボトルのお茶を飲む十四松に少し呆れつつも、思わず笑顔がこぼれる。
なんていうか、十四松って一緒にいるだけで元気になれるみたいなところがあるよね。
いっつも笑ってるし。
まぁ、時々逆にそれが心配になったりもするんだけど。
「ぷはっ! あ! 全部飲んじゃった!! ごめん姉さん!」
「いいよいいよ、気にしないで」
重いケンダッキーを持ってずっと立ちっぱなしだったので、ふいに疲れが来て、その場の綺麗な芝生の上に腰を下ろすと、十四松も隣に座ってくれた。
持っていたマフラーを敷いて、そこにミケ子を下ろすと、ふぅっと大きく一つ息を吐く。
「あ~~座ったら一気に疲れがきた・・・」