第5章 平穏な日々に嵐はやってくる~十四松
「う~ん、相変わらず肩が強い・・・」
「うん!! 遠投80mはいける!!!」
「ひぎゃあえぇぇええ!! じゅ、十四松?!」
「はい!! 十四松でっす!!!」
いやいやいやいや、今土手の下の河原にいたでしょ?いたよね?え?気のせい?
気のせいじゃないよね?!なに、怖いんだけど!!瞬間移動?!分身の術?!
・・・ダメだ、深く考えるのはやめよう、だって相手は十四松だ。
私は一呼吸置いてニッコリと笑顔を作る。
「な、なんだか少し久しぶりだね十四松~!」
「そっスね! 姉さん、買い物の帰り?スッゲーいい匂いすんね!」
「ああ、うん、ちょっとね。 十四松は野球の練習してたんだよね、見てたよ~メッチャかっ飛ばしてたね!すごいすごい」
「マジすか! あざーっす!!」
十四松が勢いよくお辞儀をしてまた顔を上げると、バチリと目があい、なんだか2人で笑ってしまった。
「あははは、相変わらず元気いいね。昔はよく十四松の野球の練習一緒に見てたりしてたけど、久しぶりにまたゆっくり見てたいなぁ」
「マジすかマジすか! じゃあ今度、ボクのとっておきの練習場所を案内するねー!」
「マジすかマジすか! 楽しみにしてるね! あ~その時はまた2連休とらなきゃだな~じゃないと探検ごっこしながら練習場所に行けないもんね!」
「懐かしいね!」
子供の頃、十四松に連れられて秘密の練習場所に行くときは、その途中で見つけた珍しい花や虫をああでもない、こうでもない、なんて言って探検しながら行ってたんだよね。
実は秘密の練習場所なんてなくて、適当なところに着いたらそこを秘密の場所、なんて言って遊んでいたんだけど。
子供にはありがちだよねぇ。
「ところで姉さん、さっきから気になってたんだけど、この子はだぁれ?」
頭上に?マークを浮かべ、私の腕に抱かれている子を指差す十四松。
子猫なのはわかっているのだろう、体を左右に傾けながらじーっと覗き込んでくる。
「色々あって、ウチで飼うことになった、三毛猫のミケ子だよ」
「初めまして!十四松でっす! メッチャ足速いよー!野球大好き!よろしくねー!!」